実践編

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ちょっとしたテクニック

ここではラジオを聞くときにできる簡単なテクニックを紹介します.

雑音を抑えるには?

ラジオを聞くときに雑音は非常に邪魔になります. 雑音の発生源としては,テレビ,蛍光燈,コンピューター,高圧線,雷,静電気などがあります. このうち雷など自然現象に由来するものはあきらめるしかありません. ラジオを聞くときにはなるべく他の電気製品を使わないようにしましょう. できないときは,それらからラジオをできるだけ遠ざけるようにしましょう. ただし,白熱電球など内部で高周波を発生させないものは大丈夫です.

また,ラジオの電源をコンセントからとっていると雑音がひどくなることがあります. ラジオの電源は電池の方がよいでしょう. ただ,電池は消耗が激しいので難しいかもしれません. コンセントから電源を取っていて雑音がひどいときは,コンセントに差すプラグの向きを反対にしてみましょう. 片方がアースになっているので雑音が軽減されることがあります.

混信を減らすには?

遠くのラジオを聞くときは混信が邪魔になります. 混信を完全に取り除くのは無理ですが軽減することはできます. まず,ラジオをゆっくりと動かしてみましょう. すると,感度が変化するのがわかると思います. これはラジオに内蔵されているバーアンテナの指向性によるものです. ラジオをゆっくり動かしていくと音がほとんど聞こえなくなる場所が2個所あります(夜間でなく昼間にやってみましょう). この場所を混信してくる放送局の方向に向ければ混信を軽減できます. ただし,聞きたい放送局も同じ方向にあるとだめですが…

ラジオの感度を上げるには?

ラジオの感度を上げるのに簡単な方法があります. 電話機のコードにラジオを近づけてみましょう. これだけで感度が上がるのがわかると思います. 同様にコンセントに近づけても感度が上がります. しかし,同時に雑音も大きくなる可能性が高いので注意が必要です. 都会では雑音がひどくなる確率が高いと思います.

ラジオの置き場所に注意しましょう. トイレやお風呂などで感度がよいこともあります. ラジオを持っていろいろ場所を変えるのも効果があります.

特に,建物が鉄筋で出来ている場合は, 窓際にラジオを持っていく, アンテナを窓の外に設置する, などの工夫をしないと良好な受信は期待できません.

ラジオの録音について

ラジオ番組の録音には何を使っていますか?

今なら,民放のradikoやNHKのらじるらじるなどのネット経由で録音するのが一番手軽です.専用のソフトウェアもありますので予約録音なども可能です.

昔ながらの方法としては,ラジカセなどで録音する方法です.今なら,USBメモリーやSDカードなどに録音できる機種もあるので便利です.

カセットテープだと音もあまり良くないし長時間の録音にも向いていません.そこで,私はビデオテープを使っています. ビデオテープならば120分テープを3倍で使えば最長6時間の録音が出来るし,タイマーがついているので留守録にも便利! さらに,HiFiのビデオデッキならばFMやAMステレオの録音にもってこいで, しかも音質はカセットよりもはるかにいいのです. 今はカセットテープよりもビデオテープの方が安いのでお薦めです. さらに必殺技として HiFiの場合は左右の音声に別々のラジオをつないで同じ時間の番組を同時録音が可能です!!

アンテナを工夫する

ここでは遠距離のラジオを聞くときのアンテナを考えます.

どのアンテナが現実的か?

遠距離のラジオを聞くときに問題になるのは雑音他局の混信ラジオの感度不足などです.

これらを解決するためにはよいアンテナが必要になります. 混信について考えてみるとアンテナの指向性と周波数の選択度が重要になります. 感度不足ということになるとアンテナの利得が重要になります(私の経験からいって,感度不足よりも混信が深刻であることの方が多いと思われます). この目的に適しており制作と設置が容易で雑音にも強いアンテナはループアンテナということになります.

既製品のループアンテナですが,ミズホ通信のUZ-8DXでTBSラジオを聞いた場合の効果もあります.

ループアンテナの制作

ループアンテナを作るということは共振回路を作るということです. わからないところがあれば,連絡を下さい.

必要な材料

材料は電気のパーツ屋あるいはアマチュア無線の店などに行けば手に入ります. 東京なら秋葉原,名古屋なら大須,大阪なら日本橋などに行けばあるでしょう.

導線
数十メートル(必要量),電気の流れるものならば何でもよいが電気抵抗の小さいものがよい. 電気抵抗が少なく手に入れやすいものは銅の線です. ニクロム線のような抵抗の大きな線を選ばないよう注意してください.
バリアブルコンデンサー(バリコン)
最大容量のなるべく大きなもの(300pF以上が望ましい),できればエアバリコンがよい. 値段は500-1000円程度だと思います. 名古屋では大須の第一アメ横2階の「ボントン」という店に中古のエアバリコンが置いてあります.
導線を巻き付けるもの
できるだけ大きな段ボール箱など,木の棒を十字に組み合わせたものでもよい. 導線の囲む面積が大きいほうがよい. ハンガーなどに巻いた導線を吊るして使うという方法もあります.

制作手順

  1. 導線を巻き付けコイルを作ります. このときコイルの断面積の大きい方がアンテナの感度が上がります.あまり大きくしすぎると邪魔になり,雑音も拾いやすくなるので注意.目安としては断面積が1平方メートルのときは10から15回程度巻きます.

    巻数をどの程度にすればよいか分からない場合があると思いますので,簡単な近似計算を書いておきます.バリコンの最大容量が分からない場合は計算できないので注意して下さい.バリコンの最大容量を \(C\),受信したい中波放送の下限周波数を \(f_{\text{min}}\) とすると,必要なコイルのインダクタンス \(L\) は次の式であらわされます.\begin{equation}L = \frac{1}{ ( 2 \pi f_{\text{min}} )^2 C} \label{eq:L}\end{equation}基準として,Nagoya DXers Circleにある中波用3mループアンテナを参考にします. このループアンテナのインダクタンスは約70 (μH) であるという記述があります.一般的に,コイルのインダクタンス \(L\) は,巻数 \(N\),断面積 \(S\) の関数として次式のようにあらわされます.\[L = A N^2 S\]参照するループアンテナの場合(\(N=2\), \(S=9 \,\text{m}^2 \))を代入すると,比例定数の A が求められます.\[70 \times 10^{-6} \,\text{H} = A \times 2^2 \times 9 \,\text{m}^2 \] \[A = 1.94 \times 10^{-6} \, \text{H/m}^2 \]自分の作成したいコイルのインダクタンスを L とし,断面積を S とすると,巻数 \(N\) は,\begin{equation}N = \sqrt{ \frac{L}{ A S} }\label{eq:N}\end{equation}例えば,バリコンの最大容量が 300 pF,受信したい最低周波数が 500 kHz とすると,\(\eqref{eq:L}\)式から必要なインダクタンスは約 340 μH になります.断面積を 1 m2 とすると,\(\eqref{eq:N}\)式を用いて必要な巻数 \( N = \sqrt{ \dfrac{340 \times 10^{-6}}{ 1.94 \times 10^{-6} \times 1 } } = 13.2 \) となり,13 回程度巻けばよいことが分かります.なお,k=103,μ=10-6,p=10-12 をあらわします.

  2. コイルの導線の両端をバリコンの端子につなぎます.半田付けをした方がいいです.ポリバリコンの場合,端子が3つあって分かり難いかもしれません.その場合には真ん中の端子に導線をつなぎ,両側の端子を一つにまとめて導線のもう一方の端を取り付けます.

  3. アンテナの巻線の両端をバリコンにつなぐ.

アンテナの調整

調整は昼間の方がやりやすいです.

  1. アンテナの側にラジオを置き電源を入れます.ラジオの位置はアンテナのコイルの中心線上に近いところ,あるいは巻いてある線のなるべく近くに置いてください.ラジオにアンテナが内蔵されている場合,ラジオのバーアンテナとループアンテナの位置関係が重要です.ループ面の中心にバーアンテナが来るようにすると感度がよくなるはずです.
  2. バリコンを回してラジオの音が大きくなるかを調べます.低い周波数から高い周波数まで音が大きくなればOKです.
  3. 低い周波数で音が大きくならないときはコイルの巻数を増やします.
  4. 高い周波数で音が大きくならないときはコイルの巻数を減らします.
  5. 3. 4. を繰り返して希望する周波数が入るまで巻数を調整します.たいていは巻数が足りないことが多いと思うので,余分に巻いておいて巻数を減らしていくほうがよいでしょう. この作業はひたすら根気がいります.あきらめずに調整を続ける事です.

アンテナの使い方

  1. アンテナの側にラジオを置いてアンテナのバリコンを回して希望の周波数で音が大きくなるようにします. ラジオの位置はアンテナのコイルの中心線上に近いところ,あるいは巻いてある線のなるべく近くに置いてください.

  2. 聞きやすい方向が見つかるまでアンテナの向きをいろいろと変えてみます. この時ラジオの向きもアンテナと一緒に変えましょう.

ラジオに外部アンテナの端子がある場合

ラジオに外部アンテナの端子がある場合はこれを使いましょう. 完成したループアンテナのコイルの部分に1回だけ線を巻き付けます. この線をラジオのアンテナ端子につなげばアンテナの性能をフルに使えます.

赤い線のようにピックアップ用の線を巻きつけて受信機に接続する. ピックアップの線の巻き方によってアンテナとのインピーダンスマッチングを取っているので,巻き方を調整することで受信状態を最適にできる.

アンテナ端子のないラジオの場合でも,ピックアップ用の線をラジオに巻きつけると効果があります.

ループアンテナの効果

ループアンテナがどれくらい効果があるのか録音したもので比べてみます.なお,パソコンで直接取り込んだので若干のノイズが入っています.

ループアンテナなし
ループアンテナあり
使用したアンテナ
ミズホ通信 UZ-8DX アンプなし
使用したラジオ
SONY ICF-SW55
受信日
1998年5月31日
受信した放送局
TBS (954kHz)
受信した番組
伊集院光の日曜大将軍 (15:00-18:00)
受信地
静岡市

音質の改善で聞きやすくする

より快適な受信のためにラジオから出てくる音を聞きやすくする工夫を考えます.

簡単な方法

簡単な方法としては音の高さを変えることがあります.たいていのラジカセやコンポなどには,音の高低を変えるためのトーンコントロールがついていると思います. これを使って音の高さをかえると,雑音・混信の軽減に役立つことがあります.さらにグライコ(グラフィック・イコライザー)がある場合はより柔軟な音声のコントロールができます.

ラジオに音声をコントロールする機能がない場合でも.コンポなどにつなぐことで音声をコントロールできるようになります.イヤホン端子などからケーブルを使ってコンポなどに接続します.たいてい,音声の高音部をカットすることで雑音を軽減することができると思います.

また,放送を聞きにくいときはイヤホンヘッドホンを使った方が聞きやすくなります.

フィルターを使う

さらに積極的な方法としてはフィルターを使うという方法があります.ラジオからの音声をイヤホンの端子などから入力して使います.

フィルターには大きく分けると4つの種類があります. 低い周波数だけを通すローパスフィルター,高い周波数だけを通すハイパスフィルター,ある周波数の近傍だけを通すバンドパスフィルター,ある周波数の近傍をカットするノッチフィルターです. これらのフィルターは自作することもできますし,市販されているものもあります.自作にかかる費用は4000円ぐらいでしょうか.私もだいぶ前に作ったものを持っています.最近はあまり使いませんが,聞きにくい放送局を聞くときにはかなり効果があります.特に雑音が気になるときはノッチフィルターが効果を発揮します.高い専用の受信機を買うと付いていることが多い機能です.フィルター回路に関する情報は「トランジスター技術」などの専門誌を見るとよくわかると思います.

さらに効果の高いフィルターとしてはデジタルフィルターというものがあります. DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)というチップを用いて信号を処理するというもので音声を望むようにコントロールすることができます.

実際に録音したもの

TBSラジオ:前半20秒がミズホのUZ-8DXを使わない状態.後半20秒がミズホのUZ-8DXを使った状態.ループアンテナによりMDから発生する雑音を消去できると判明.
受信器材
KENWOOD MDX-J9 + ミズホ通信UZ-8DXアンプ無し
番組名
TBSラジオ ラララ日曜日
受信日時
2002年9月1日12時ごろ
ABCラジオ:パソコンで直接取り込みのため雑音が多い.パソコンに接続しない状態の受信状況はもっとよい.
受信器材
SONY ICF-EX5 + ミズホ通信UZ-8DXアンプ無し
番組名
ABCラジオ 東西南北 龍介がゆく
受信日時
2002年8月21日9時8分ごろ
AM神戸(現:ラジオ関西):パソコンで直接取り込みのため雑音が多い.ディスプレイから猛烈な雑音が発生するため,ディスプレイを消した状態で録音.
受信器材
SONY ICF-EX5 + ミズホ通信UZ-8DXアンプ無し
番組名
AM神戸 谷五郎のOh!ハッピーモーニング
受信日時
2002年8月21日9時33分ごろ

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